傘を差して街に出た。

 上記の映画が終わった後、なんだか眠れなかったので頭痛に悩まされながらもそのまま起きていた。読書、ゲームなどしながら暇を潰しているうちに突如髪を切りたくなってきて、ネットで近くの美容室、それも電車で行けるところを探して数件リストアップした。その中から直感で一つ選んで開店時間30分前に予約の電話を入れたら、「午後2時ならおーけい」とのこと。午前なら寝ずに行こうと思っていたけれど、流石に午後となると体がもちそうになかった。それでソファで2時間ほど仮眠して、雨がざあざあ降るなか駅へと向かい電車に乗った。美容院に着くと、少し待たされた。いよいよ髪を切るとき、あまり寝てないせいだろう、思考があまりうまくいかなかった。それでも席についてスタイリストさんと話し出すと止まらなかった。ナチュラル・ハイとはこのことだ。気付けば僕を構成する一部であったはずの黒くて糸状のやつらが床に散らばっていた。眼鏡を外していたからしばらく気にならなかったのだ。ある程度カットが終わり、眼鏡をかけてよいとの御達しがようやく出された。眼鏡をかけて見てみると鏡に映っていたのは40分前の僕ではなく、いつぞや見たことのある一人の男だった。あるべきものがない。このようにして僕の頭髪は1時間足らずの間に15サンチほど短くなっていたのだった。これで僕も常識人だ。隠すことではないから示すけれど、とてもいい美容室だった。「また来ます」それだけ言って美容室を出た。雨はしとしと降っていた。このまま帰るのはなんだか情けない気がして、前々から気になっていた59系統のバスの車窓から見えるコーヒーショップを訪れた。今日日、ブレンドコーヒーを1杯350円でサーブする店はさほどない。気がする。その飴色の液体を啜りながら京都新聞を眺め煙草を2本吸い、おかわりを頼むか逡巡したあげくお腹のことを思ってやめておいた。よく気がついたものだ。昨夜からお腹の調子がよくない。いや、慢性的なものか。そして雨がパラパラ降るなか家路に就いた。